寒い時期になってきましたね。11月に、日本旅行業協会様において、旅行業協会の働き方改革のセミナーを担当させていただきました。その後も、事業場外労働のみなし労働時間制についての問い合わせをよく頂くのでこの機会に考えてみました。
1.事業場外みなし労働時間制について
事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合に、原則として所定労働時間労働したものとみなす制度です
昭和62年に制定された条文で、外交セールス、記事の取材等の事業外で働く労働者に適用する制度でした。そのため、労基署の監督官は口をそろえて「今は、携帯電話、GPS機能勤怠管理システム等により、事業外にいても労働時間を算定できない業務はない」とおっしゃいます。
厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、事業外外みなし労働時間制を採用している企業の割合は14.3%と多くないようです。また、労働者側からは、事業場外みなし労働時間制が「定額働かせ放題」であるとの批判もあるようです。
2.添乗業務に事業場外みなし労働時間制を適用できるのか?
旅行業界では、添乗業務に事業場外みなし労働時間制を適用していますが、適用できるのか検討したいと思います。
「阪急トラベルサポート残業代等請求事件(最高裁第二小法廷平成26.1.24)」
○争点:旅行会社の主催する募集型企画旅行の添乗業務について、事業場外労働のみなし
労働時間制が適用できるか。
○判決要旨:みなし労働時間の適用:×
添乗業務については、添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認
め難く、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえ
ない。
○【判決のポイント】
①業務の内容が あらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる事項の範
囲及びその決定にかかる選択の幅は限られている(裁量性がない)
②旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等に
つき詳細な報告を受ける。(労働時間の報告をしている)
③ツアーアンケートや関係者に問い合わせることによって、旅行日程の正確性を確認でき
る。(②の正確性を確認できる→労働時間の算定できる)
上記の①から③から「労働時間を算定しがたいとき」に当たらないとされました。確かに添乗は、自らの裁量だけで行程を変えたり、飛行機やバスに乗っている時間が自由利用できたりするかというと難しいように思います。また、添乗終了後、行程表に時間を入れて報告書させている会社が多いと思います。
3.対策について
上記から、添乗業務を事業場外のみなし労働時間制とするのは、難しいのかと考えております。でも、この問題は、実態が所定労働時間を超える業務なのに、割増賃金を払わずに「所定労働時間労働したこととみなす」としていることを、監督署が問題としているように感じています。例えば、以下のような例です。
例:添乗時間8時から20時(休憩除き11時間労働)>所定労働時間(8時間労働)
添乗業務では、行程表より早い日、遅い日もあると思います。その実態をよくわかっている労使間で協議をして、労使協定において平均で必要な労働時間が、例えば10時間であるなら、10時間と協定して、労働基準監督署に届出をします。10時間が、実体と大きなかい離がなければ、監督指導において是正勧告になることはないように考えています。
しかし、来年4月の安衛法改正により、管理職やみなし労働時間の適用労働者も労働時間の状況の把握(どの位労働を提供し得る状態にあったかか)が義務になります。勤怠管理システムを導入して、始業・終業時間の報告をスマホで行う場合には、労働時間の算定が困難と言える業務はなくなってしまうことも考えられます。
各社にあった対応方法を一緒に考えるお手伝いをしたいと思っております。お気軽にご相談ください。
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