1.年次有給休暇の取得率は50%を超えたが、世界レベルでは最下位
厚生労働省の平成30年「就労条件総合調査」の年休の取得率は51.1%で、平成11年以降18年ぶりに50%を超えました。しかし、独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「年次有給休暇の取得に関する調査(2011年」によると、正社員で「年休を1日も取得しない人」の割合は16.4%、取得日数が少ない「3 日以下の人」の割合は「上司が年休をとらないタイプであるほど高まる傾向」にあるそうです。また、エクスペディアが2017年に実施した世界30ヶ国の「有給休暇に関する調査」によると、日本人の年休消化率は2年連続で世界最下位という結果です。来年4月より、使用者は、年10日以上の年休が付与される労働者に対し、毎年5日間の年休を時季指定して与えないといけません。これは、労働者の取得義務ではなく、使用者が、時季を指定して取得させる義務です。また、従業員一人当たり最大30万円の罰金が科されるため、使用者はすぐに対策を検討する必要があります。
「エクスペディアPR事務局」HP https://welove.expedia.co.jp/press/39867/
2.中小企業の取り組み事例
しかし、中小企業の経営者から、「中小企業では人手不足だから年休なんて取得できないよ」、「(大企業でも)振替休日ですら取得できないので年休なんで無理だよ」という声をよく聞きます。悩ましいところですが、法改正は中小企業でも待ったなしです。せっかく対策を検討するなら、会社の強みをつくるチャンスとして考えてみませんか?年休が取りやすい環境を整えることにより、採用活動時のPRや従業員の生産性の向上や定着の効果も見込めます。工夫して年休の取得促進をしているなと感じた中小企業の事例を、厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」から紹介します。
○株式会社シンコーメタリコン 滋賀県 従業員82名
・連続休暇制度『ドリームセブン』の実施
7日間連続休暇制度を『ドリームセブン』と命名し、盆、正月の大型連休以外に、社員が各自計画を立てて年次有給休暇を連続取得する制度を平成27年11月より導入した事例です。現在取得率は100%のようです。
○株式会社エムズメディカル 岐阜県 従業員19名
・年休取得を人事評価制度に組み込む
社内には、上司が年次有給休暇を取得していないため、部下も取得しにくい雰囲気があったので、人事評価制度の中に、年次有給休暇取得をしなければ評価が下がる仕組みを組み込むなど、取得促進を行った事例です。
○AGCアメニテック株式会社 東京都 従業員数62名
・計画的付与制度の活用
年次有給休暇のうち3日については、計画的付与制度を活用して夏季に一斉付与し、社員の心身のリフレッシュを図っている事例です。
○株式会社メディプラス 東京都 従業員数30人
・「ファミラブ制度」による年次有給休暇取得促進(2015年12月~)
社員の年次有給休暇取得を促進するため、以下を中心とする「ファミラブ制度」を実施。年次有給休暇の取得のハードルを下げ、会社から取得のきっかけを提供することで取得を促している事例です。
①年に4回(お正月・お盆・GW・10月)、1週間の間6時間勤務の日を設定。(半日休暇の場合、3時間勤務するだけになり、休暇が取得しやすくする。)
②お正月・お盆には「商品券1万円分」を進呈し、家族でのレジャーや食事での利用を促すことで、「家族の為」という有給休暇取得の理由を会社が提供することで、取得しやすくしている。
3.年休取得促進の7つのポイント
法改正により年休5日取得の方法を考えるなら従業員と話し会って、自社のオリジナルの制度を検討してみませんか?年休取得促進方法のポイントをまとめました。年休を取得しづらい雰囲気の会社の場合、以下①、②、③を検討してください。半日単位の休暇も5日の対象になるので半日休暇を導入していない場合には、導入するのも良いでしょう。
①経営者自ら取得を促進する。
②年休の取得率を人事評価制度に取り込む(賞与のポイントにしている企業もあります)
③会社主導の制度として、後ろめたさがなく取得できる制度にする
④会社オリジナルの取得促進ネーミングをつけて取得を促進する
⑤休取得計画表などで取得計画を会議等で皆で作成する
⑥年休の取得率を人事評価制度に取り込む
⑦半日休暇制度を導入する
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